HACCP(ハサップ)とは?
義務化から導入手順、認証までわかりやすく解説

HACCP(ハサップ)は、食品の安全を確保するための国際的な衛生管理システムです。この記事では、HACCPの基本概念から義務化の背景、導入の手順、そして認証取得までをわかりやすく解説します。食品事業者だけでなく、食品の安全に関心のあるすべての方にとって役立つ情報を提供します。

HACCP(ハサップ)とは?基本を理解する

HACCP(ハサップ)は、食品の製造・加工・流通などの工程で発生するリスクを事前に分析・管理することで、食品の安全性を確保する国際的な衛生管理手法です。日本では2021年に原則すべての食品事業者に義務化され、事業規模に応じた対応が求められています。

本記事では以下の内容をわかりやすく解説しています:
HACCPの定義と国際的な位置づけ(Codex準拠)
義務化の背景と対象事業者、違反時のリスク
導入ステップと7原則12手順の具体的内容
HACCP認証の種類・取得メリット・費用感

HACCPは単なる制度ではなく、消費者の信頼を獲得し企業の競争力を高める基盤です。導入に向けた準備と活用のポイントを押さえ、安全・安心な食品提供体制の構築にお役立てください。

HACCPの定義と目的

HACCP(ハザード・アナリシス・アンド・クリティカル・コントロール・ポイント)は、食品安全を確保するための国際的に認められた衛生管理システムです。このシステムは、食品の製造、加工、流通といったあらゆる段階で発生する可能性のある危害を特定し、それらを効果的に管理・予防することを目的としています。

HACCPの導入により、従来の最終製品の検査に頼る方法から、より積極的な予防管理へと移行し、食品の安全性を根本から向上させることが可能になります。

HACCPは、単なる衛生管理手法ではなく、食品安全文化を醸成し企業の信頼性を高めるための重要なツールとして、世界中で広く採用されています。

危害要因の分析と重要管理点の特定を通じて、食品事業者は自社の製品とプロセスに特有のリスクを理解し、適切な管理策を講じることができます。これにより、食中毒のリスクを最小限に抑え、消費者の健康を守ることがHACCPの重要な目的です。

コーデックス委員会とHACCP

コーデックス委員会(Codex AlimentariusCommission)は、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)によって設立された、国際的な食品規格を設定する機関です。コーデックス委員会は、食品の安全性、品質、公正な貿易を確保するために、食品規格、ガイドライン、実施規範などを策定しています。

HACCPは、コーデックス委員会によって食品衛生に関する一般的な原則として採用されており、 国際的な食品取引における重要な基準となっています。多くの国々が、コーデックスのHACCPガイドラインを基に、自国の食品安全規制を整備しています。

このガイドラインは、HACCPシステムの構築と実施に関する具体的な手順と原則を提供し、食品事業者が国際的な基準に沿った衛生管理を行うことを支援します。

コーデックス委員会のHACCPガイドラインは、食品の安全性を確保し、国際貿易を促進するための共通の枠組みを提供しており、世界中の食品事業者にとって重要な指針となっています。

従来の衛生管理との違い

従来の衛生管理方法では、主に最終製品の抜き取り検査に重点が置かれていました。しかし、この方法では、問題のある製品が市場に出回るリスクを完全に排除することはできません。

最終製品の検査は、あくまで一部の製品を対象とするため、検査されなかった製品に問題がある場合、それを発見することが困難です。これに対して、HACCPシステムは、食品の製造工程全体を継続的に監視し、管理することに重点を置いています。

HACCPでは、原材料の受け入れから製造、加工、包装、出荷、そして最終的な消費に至るまでのすべての段階で危害要因を特定し、それらを管理するための対策を講じます。これにより、問題が発生する前に予防することが可能となり、より効果的な安全管理が実現します。

HACCPは単に問題を検出するだけでなく、問題の発生を未然に防ぐためのシステムであり、食品安全管理の根本的なアプローチを変革します。

HACCP義務化の背景と現状

HACCP義務化の経緯

食品衛生法の改正により2021年6月1日からHACCPに沿った衛生管理が、原則としてすべての食品事業者に義務付けられています。この改正は2018年6月13日に公布され、猶予期間を経て正式に施行されました。

HACCP義務化の背景には、食中毒事件の発生や食品に関する国際的な基準との整合性の必要性があります。従来の衛生管理方法では、食品の安全性を十分に確保することが難しいという認識が高まり、より効果的な衛生管理システムであるHACCPの導入が求められるようになりました。

HACCP義務化は、食品の安全性を向上させるための重要なステップであり、すべての食品事業者がHACCPの原則に基づいた衛生管理計画を策定し、実施することが求められています。

これにより、食品の安全性が向上し、消費者の健康保護に繋がることが期待されています。また、食品事業者の衛生管理レベルの向上にも貢献することが期待されます。

義務化の対象となる事業者

HACCP義務化は大規模な食品製造業者だけでなく、中小規模の食品事業者にも適用されます。具体的には、食品の製造、加工、調理、販売など、食品に関わるすべての事業者が対象となります。 ただし、事業規模や取り扱う食品の種類に応じて、求められる衛生管理のレベルが異なります。

大規模事業者にはより高度なHACCPに基づく衛生管理が求められる一方、中小規模事業者には、より簡略化されたHACCP(HACCPに基づく衛生管理)が認められています。HACCPに基づく衛生管理では各事業者が自社の規模や特性に応じた衛生管理計画を策定し、 実施することが求められます。

厚生労働省は中小規模事業者向けに、HACCPに基づく衛生管理のための手引書や支援ツールを提供しており、これらの情報を活用することで、HACCP導入をスムーズに進めることができます。すべての食品事業者がHACCPの原則を理解し、適切な衛生管理を実施することで、食品の安全性を確保し消費者の信頼を得ることが重要です。

HACCPを無視した場合の罰則

HACCPに違反した場合、食品衛生法に基づき行政指導営業停止命令、または罰金などの罰則が科せられる可能性があります。違反の内容や程度によっては刑事責任を問われることもあります。

例えば、食中毒事件が発生し、HACCPに基づく衛生管理が適切に行われていなかったことが原因であると判断された場合、事業者は多大な損害賠償責任を負う可能性があります。また、HACCP違反が発覚した場合、企業の信用は大きく損なわれ消費者からの信頼を失うことになります。

これは、長期的な事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。したがって、食品事業者はHACCPの遵守を徹底し、適切な衛生管理を行うことが非常に重要です。

HACCPを遵守することで、食品の安全性を確保し、食中毒などの事故を未然に防ぐとともに、企業の信頼性を高めることができます。

HACCP導入の手順と7原則12手順

HACCP導入のステップ

HACCP導入は、以下のステップで進められます。
①まずHACCPチームを編成し、製品説明書を作成し、製品の用途と対象となる消費者を明確にします。
②次に製造工程一覧図を作成し、すべての工程を詳細に記述します。
③その後危害要因分析(HA)を行い、各工程で発生する可能性のある生物的、化学的、物理的な危害要因を特定します。
④次に重要管理点(CCP)を決定し、危害要因を管理するために不可欠な工程を特定します。CCPごとに管理基準を設定し、危害要因を管理するための具体的な基準値を定めます。モニタリングシステムを確立し、CCPが管理基準を満たしているかどうかを定期的に監視する方法を定めます。改善措置を設定し、モニタリングの結果、管理基準から逸脱した場合の対応策を定めます。
⑤検証手順を確立し、HACCPシステムが有効に機能しているかどうかを定期的に検証する方法を定めます。
⑥最後に記録と文書化を行い、HACCPシステムのすべての手順と結果を記録し、文書化します。

これらのステップを遵守することで、効果的なHACCPシステムを構築することができます。

7原則12手順の詳細

HACCPの7原則12手順は、食品安全管理の具体的な進め方を示すものです。

7原則は、危害要因分析の実施、重要管理点の特定、管理基準の設定、モニタリング方法の確立、 改善措置の設定、検証方法の確立、記録の作成と維持です。

12手順は、HACCPチームの編成、製品説明書の作成、製品の用途と対象消費者の明確化、工程図の作成、工程図の現場での確認、危害要因の一覧表の作成と危害要因の特定、重要管理点の決定、管理基準の設定、モニタリングシステムの確立、改善措置の設定、検証手順の設定、記録と文書化の確立です。

これらの手順を遵守することで、食品事業者は自社の製品とプロセスに特有のリスクを理解し、適切な管理策を講じることができます。危害要因分析では、生物的、化学的、物理的な危害要因を特定し、それらの発生を予防または許容できるレベルまで低減するための管理策を講じます。

重要管理点では危害要因を管理するために不可欠な工程を特定し、適切な管理基準を設定します。モニタリングでは、CCPが管理基準を満たしているかどうかを定期的に監視し、逸脱があった場合には改善措置を講じます。

検証では、HACCPシステムが有効に機能しているかどうかを定期的に検証し、必要に応じて改善を行います。記録と文書化では、HACCPシステムのすべての手順と結果を記録し、文書化します。

HACCP導入のための参考情報

HACCP導入を支援するために、厚生労働省や農林水産省などの政府機関が様々な参考情報を提供しています。これらの情報源にはHACCP導入のための手引書、リーフレット、動画、セミナー、相談窓口などがあります。

厚生労働省のウェブサイトではHACCPの概要、HACCPに基づく衛生管理の進め方、業種別の手引書、Q&Aなどが掲載されています。

農林水産省のウェブサイトでは、食品事業者のHACCP導入を支援するための情報が提供されており、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理計画の作成方法などが解説されています。

また、各都道府県や市区町村も、HACCP導入に関する相談窓口を設けており、専門家によるアドバイスや支援を受けることができます。さらに、食品衛生協会などの業界団体も、HACCPに関するセミナーや研修会を開催しており、HACCPの知識や技術を習得することができます。

これらの参考情報を活用することで、食品事業者はHACCP導入をスムーズに進め、食品の安全性を向上させることができます。特に中小規模事業者にとっては、これらの支援策を活用することが重要です。

HACCP認証とは?取得のメリットと注意点

HACCP認証の概要

HACCP認証は第三者機関が食品事業者のHACCPシステムを評価し、そのシステムが一定の基準を満たしている場合に認証を与える制度です。

この認証は、食品事業者がHACCPに基づいた衛生管理を適切に実施していることを客観的に証明するものであり、食品の安全性をアピールする上で非常に有効です。

HACCP認証を取得するためには食品事業者はまずHACCPシステムを構築し、一定期間運用する必要があります。その後、認証機関に申請し、審査を受けることになります。

審査では、HACCPシステムの構築状況、運用状況、記録の管理状況などが詳細にチェックされます。認証機関は食品事業者の規模や業種に応じて、適切な審査を行い、認証の可否を判断します。

HACCP認証には、ISO22000FSSC22000JFS規格など、様々な種類があります。それぞれの認証には、基準や審査方法が異なり、食品事業者は自社のニーズや目的に合った認証を選択する必要があります。HACCP認証を取得することで、食品事業者は食品の安全性を高め、消費者や取引先からの信頼を得ることができます。

認証取得のメリット

HACCP認証を取得することには多くのメリットがあります。まず、顧客からの信頼を得やすくなるという点が挙げられます。HACCP認証は、第三者機関による客観的な評価を受けた証であり、消費者はその製品やサービスに対して安心感を抱きやすくなります。

また、企業イメージの向上にもつながります。HACCP認証を取得している企業は食品安全に対する意識が高いと評価され、社会的な信頼を得ることができます。

さらに、取引先からの要求を満たすためにも有効です。多くの大手企業や小売業者は取引先に対してHACCP認証の取得を求めることがあります。HACCP認証を取得することで、これらの取引先との取引が円滑に進むようになります。

HACCP認証は、企業の競争力を高めるための重要な要素の一つとなっています。

認証取得までの時間と費用

HACCP認証取得には、準備期間や審査費用など一定の時間と費用がかかります。準備期間は食品事業者の規模や業種、HACCPシステムの構築状況などによって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年程度かかることがあります。

まず、HACCPチームを編成し、HACCPシステムを構築する必要があります。次に、HACCPシステムを運用し、記録を作成する必要があります。その後、認証機関に申請し、審査を受けることになります。審査費用は、認証機関や認証の種類によって異なりますが、数十万円から数百万円程度かかることがあります。

また、HACCPシステムの構築や運用にかかる費用も考慮する必要があります。HACCP認証取得を検討する際には、事前に十分な計画を立て、費用対効果を検討することが重要です。

HACCP認証を取得することで得られるメリットと認証取得にかかる時間と費用を比較し、自社にとって最適な選択をすることが大切です。また、認証機関の選定も重要です。信頼できる認証機関を選び、適切な審査を受けることがHACCP認証取得の成功につながります。

さいごに HACCPを理解し、食品安全を向上させよう

HACCPは食品の安全を確保するための非常に重要なシステムです。HACCPの基本を理解し適切な衛生管理を行うことで、食中毒などのリスクを低減し、安全な食品を提供することができます。

HACCPは、食品の製造工程における危害を予測し、管理するための衛生管理システムであり、食品の安全性を確保し、食中毒などのリスクを低減することを目的としています。

HACCP義務化は、食品衛生法の改正により、HACCPに沿った衛生管理が原則としてすべての食品事業者に義務付けられたものであり、食品の安全性を向上させるための重要なステップです。

HACCP導入の手順と7原則12手順を理解し、適切にHACCPシステムを構築し運用することで、食品事業者は自社の製品とプロセスに特有のリスクを理解し適切な管理策を講じることができます。

HACCP認証は第三者機関が食品事業者のHACCPシステムを評価し、基準を満たしている場合に認証を与える制度であり、認証取得は食品の安全性をアピールする上で有効です。

食品事業者はHACCPを理解し適切な衛生管理を行うことで、食中毒などのリスクを低減し安全な食品を提供することができます。そして、消費者の健康を守り企業の信頼性を高めることができます。

まずは、お気軽にお問い合わせください。